クロス通貨:二つの取引に隠れたエクスポージャーを見抜く
クロスレートを算出し、残存する通貨エクスポージャーを特定し、直接取引と合成取引の執行を比較します。

単位を約分する
共通の通貨を含む二つのレートから、クロスレートを計算できます。EUR/USDの単位はドル/ユーロ、USD/JPYは円/ドルです。掛け合わせるとドルの単位が消え、円/ユーロになります。二つのレートの建値通貨が同じなら、通常は割り算を使います。単位を最後まで書くことで、もっともらしい数字に惑わされずに計算を確かめられます。
この計算は、取引費用前の整合した同時点の価格に対する恒等式です。自動的な裁定機会ではありません。実際の気配値には買値と売値、有限の板の厚み、タイムスタンプ、決済慣行があります。仲値では安く見える合成経路も、両方の取引を執行可能にすると高くなる場合があります。
両方の建値通貨がドルなら、割り算を使います。EUR/USDが1.10、GBP/USDが1.25なら、EUR/GBPは1.10 ÷ 1.25 = 0.88ポンド/ユーロです。ドル/ユーロをドル/ポンドで割ると書けば、残る単位から意味を確認できます。通貨ペアごとに別の公式を覚える必要はありません。
中間想定元本を合わせる
EUR/USDの買いとUSD/JPYの買いを組み合わせてEUR/JPYの買いに近づけられるのは、中間のドル数量が一致する場合だけです。ロット数が同じでも保証されません。ユーロ側のドル価値は参入時の為替レートに依存しますが、ドル側は直接ドル建てです。一致しない残りは、独立したドルリスクを残します。
現金の例では、1ユーロ1.10ドルで100,000ユーロを買うには110,000ドルが必要です。1ドル150円でそのドルを円から得ると、1,650万円かかります。二つ目の取引で100,000ドルしか買わなければ、不足する10,000ドルは別のところから必要になります。合成ポジションは、当初説明した純粋なクロスではありません。
各気配値の正しい売買の側を使う
ドル経由で円を使ってユーロを買うには、USD/JPYの売り気配でドルを買い、EUR/USDの売り気配でユーロを買います。この表示慣行では、合成売り気配は二つの売り気配の積です。ユーロを円に売る場合は、両方の買い気配を使います。どちらかのレートを逆数表示にすると、該当する側も逆になり、売り気配の逆数は買い気配になります。
この演習は合成経路を実行しなくても有用です。直接と合成の仲値比較が不完全な理由を学べます。総費用の比較には、委託手数料、資金調達費、最低注文単位、決済の違い、一つ目の取引後に市場が動いてから二つ目が約定するリスクも含める必要があります。
割り算でも気配値の側を正しく選びます。ユーロを売ってポンドを得るには、EUR/USDをビッドで売り、GBP/USDをアスクで買います。合成EUR/GBPのビッドは前者のビッド÷後者のアスク、アスクは前者のアスク÷後者のビッドです。ビッド同士を割ると、一方の取引で使えない価格を使うことになります。
相関は通貨の三角関係に従う
クロスは構成通貨のリターンと関係しています。対数リターンでは、EUR/JPYの変化はEUR/USDの変化とUSD/JPYの変化の和です。したがって変動性は、両者の変動性と相関に依存します。変動の大きい二つの構成部分も、逆方向に動きがちなら部分的に相殺し、同方向に動けば増幅し合います。
過去の相関は推定値であり、不変の法則ではありません。政策サプライズや資金調達上の出来事は、ポジションが最大のときにこそ関係を変えるかもしれません。一方だけが動く、両方が同時に動く、過去の関係が崩れるシナリオで、合成リスクを評価します。二つの注文を分散と数えても、経済的にどの通貨を持つかは何も分かりません。
通常の百分率リターンには積の項が含まれます。EUR/USDが2%、USD/JPYが3%上がったとき、EUR/JPYの上昇率は1.02 × 1.03 − 1 = 5.06%で、厳密には5%ではありません。対数リターンなら積の対数が対数の和になるため、そのまま足せます。どちらを使う場合も、途中で定義を混ぜないことが大切です。
実際の商品を記録する
現物残高、継続更新型のレバレッジ契約、先物は、必ずしも同じ方法で決済・資金調達されません。直接のクロス先物ポジションは、二つの構成先物とは契約単位や証拠金の扱いが異なる場合があります。満期が一致しない商品を組み合わせたヘッジは、当初の現物想定元本が一致しても、残余リスクの別の原因をもたらします。
机上演習では、各取引の後に通貨別残高、すなわち保有または債務のユーロ、ドル、円を書きます。その後、仮の後日レートで各残高を評価してください。この会計確認は、プラットフォームのペア表示に頼るより確実です。意図しない資金調達の必要性も明らかにし、予定したヘッジの検証を容易にします。
検証として、対応する買い気配を使って仮の取引を逆にたどります。仲値が不変でも往復取引には費用が表れるはずです。同じ不変の気配値から計算表が無リスク利益を出すなら、結果を信じる前に、レートの逆数化、中間想定元本、各市場で使った売買の側を確認してください。