確率、期待値、連敗
勝率が高くても損失は出ます。最も見栄えのよい指標ではなく、分布全体を評価する方法を学びます。

勝率は構成要素の1つにすぎない
頻繁に勝つことと利益を出すことは、別の主張です。小さな利益を多数上げても、時折の大きな損失で打ち消される手法もあります。頻繁に負けても、ときどき累積損失を上回る利益を得る手法もあります。どちらを理解するにも、記録帳のプラスの行数だけでなく、結果の頻度と大きさを記録しましょう。
結果が2種類の単純なモデルでは、1取引当たりの期待利益は、勝つ確率に平均利益を掛けた額から、負ける確率に平均損失を掛けた額と平均費用を引いた値です。これは想定確率の下での数学的平均です。次の取引、特定の月、口座の存続を約束するものではありません。通常、その確率自体も推定する必要があります。
費用控除後の値を計算する
仮の手法が勝率40%、平均利益180ドル、平均損失100ドル(いずれも費用控除前)だとします。費用控除前の期待値は0.40 × 180ドルから0.60 × 100ドルを引いた12ドルです。平均往復費用が15ドルなら、純期待値はマイナス3ドルです。魅力的なリワード・リスク比でも、実際の費用を帳消しにはできません。
次に、勝率80%で、勝つと20ドル、負けると100ドルを失う手法を考えます。費用控除前の期待値は16ドルから20ドルを引いたマイナス4ドルです。「的中率80%のシステム」という呼び方は頻度を示しても、経済的な実態を隠します。まれな損失は、短い標本で観察されたどの損失よりも大きい可能性があります。
標本の不確実性を尊重する
標本の勝率は推定値であり、市場に刻まれた不変の性質ではありません。20回の観察で10勝したという事実が、長期的な分布について示す証拠は限定的です。市場環境、執行の質、選択ルールは変わりえます。そのため、標本数と観察期間の報告も統計の報告そのものの一部です。
この単純な式は、すべての利益と損失を平均値に集約します。結果の一覧全体を確認しましょう。少数の突出した取引が、結果のすべてを生んでいるかもしれません。最大の利益取引を除き、費用を高くし、執行条件を悪くして再計算します。これは予測ではなく感応度分析ですが、結論が好都合な細部にどれほど依存しているかを明らかにします。
どちらも1取引当たり平均10ドルの利益が出た標本でも、推定の確かさは同じとは限りません。一方では結果が平均の近くに集まり、もう一方では一度の大きな利益が多数の損失を埋め合わせているかもしれません。観測が独立同分布で分散が有限なら、平均の標準誤差は標本標準偏差を標本数の平方根で割って推定できます。保有期間の重複、損失の集中、環境変化があると、この単純な計算の前提が崩れます。
平均だけでなく結果の連なりを想定する
各取引が独立しており、損失確率が50%だとわかっていたとしても、指定した連続4取引がすべて損失になる確率は0.5の4乗、つまり6.25%です。これは、長い取引系列のどこかで少なくとも1回4連敗する確率ではありません。始点の候補が多数あるからです。また、実際の結果は独立ではなく、まとまって発生する場合もあります。
平均がプラスでも、大幅なドローダウン、追証、手法の放棄は防げません。模擬取引の報告には、結果の順序、累積口座資産、過去のピークからの最大下落を示すべきです。計算は前提を明らかにするために有益です。しかし、推定した入力値を既知の物理定数と同じ確信をもって示すと、危険になります。
戦略を比較する際は単位をそろえましょう。ある数量でのドル建て期待値は、10倍のエクスポージャーで計算した値とは直接比較できません。明確に定義した当初の計画損失に対する比率で結果を示すと比較しやすくなりますが、窓開けではその1単位を超える損失が生じえます。正規化した指標と併せて実際の金額も示し、変換によって規模が隠れないようにしましょう。
一つの推定値を、ありうる結果の幅として捉える
勝つ確率が変わらない独立な100回の試行で55回勝ったとします。観測勝率は55%ですが、95%ウィルソン信頼区間はおよそ45.2~64.4%です。利益と損失が同額の賭けなら、費用を引く前でも不利になる確率を含んでいます。信頼水準は、仮定を満たす標本抽出を繰り返したときに区間作成法が真の値を覆う割合を表します。変動する市場のパラメーターが、この特定の区間に95%の確率で入っているという意味ではありません。
先の利益150ドル、損失100ドル、費用10ドルという例では、純期待値は250p − 110ドルです。p = 0.40なら−10ドル、p = 0.50なら15ドルになります。金額を固定すると、確率の不確実性だけを取り出せます。しかし実際には平均利益、平均損失、費用も推定値です。勝率だけを動かし、それ以外を確定値として扱うと、不確実性を過小評価します。
複利には別の論点があります。20%上昇した後に20%下落すると、1,000ドルは1,000 × 1.20 × 0.80 = 960ドルになります。騰落率の算術平均はゼロでも、資産は減っています。取引ごとの平均がプラスというだけでは、口座残高が望ましい経路をたどるとはいえません。保有量、再投資、途中の資金需要も必要です。
演習では、純期待値の推定、明示した数量ルールによる資産推移、不確かな入力に対する感応度を並べます。取引を一つずつ無作為に並べ替えると、隣接する結果の依存関係が失われます。連続したブロック単位で再抽出すれば集中の一部を残せますが、元データに存在しなかった危機は再現できません。