価格は見える。価値は推定するもの。
評価倍率とシナリオで前提を明らかにし、企業価値評価の表計算を誤った約束に変えないようにします。

低い株価は低い企業評価ではない
5ドルの株が本質的に200ドルの株より安いわけではありません。発行済株式数が重要です。架空の会社に5ドルの株が10億株あれば、株式時価総額は50億ドルです。200ドルの株が1,000万株の会社なら20億ドルです。株価だけでは、所有権の規模やそれを支える利益についてほとんど分かりません。
評価は、事業が生み出し得るものと、投資家がその権利に払う金額を比較します。将来の利益、キャッシュフロー、資金調達需要は不確実なので、価値は観測可能な事実ではなく見積もりです。同じ過去の決算を使っても、成長、競争、要求利益率の前提が違えば、2人のアナリストは異なる結論に至り得ます。
倍率は物語を圧縮する
株価収益率は1株当たり価格をEPSで割る、または同じ意味で株式時価総額を対応する利益で割る指標です。報告された過去利益に基づく倍率と、予想利益に基づく倍率は異なります。利益が負や異常に低い場合、この比率は役立たないことがあります。一時的な利益によって、継続事業が改善していなくても株式が割安に見える場合があります。
高倍率は成長期待、持続性への信頼、低いと認識されたリスク、過度の楽観を反映し得ます。低倍率は成長鈍化、財務ストレス、循環的に高い利益、注目不足を反映することがあります。数字から自動的にどれかの解釈が導かれるわけではありません。公益企業と急成長ソフトウェア企業を経済実態を考えずに比べると、見かけは精密でも根拠の弱い比較になります。
数値を選ぶ前に範囲を作る
シナリオ表は不確実性を明示できます。売上成長、営業利益率、株式数を別々に変えます。負債と利払い義務が株主に残るものへどう影響するかを見積もってください。その後、現在の市場倍率を将来の適切な倍率の証拠とせず、評価前提の範囲を検討します。
割引キャッシュフローの考え方は、仮定した割引率の下で将来の現金が今日いくらの価値を持つかを問います。他の条件が等しければ、割引率が高いほど現在価値は下がります。遠い将来のキャッシュフローは特に敏感です。表計算で美しく計算できても、脆い予測が組み込まれている場合があります。目標価格を小数点以下2桁まで表示するより、成長率と割引率の両方への感応度を示す方が有益です。
主張を反証可能に保つ
何が評価の論拠を誤りにするかを書いてください。利益率上昇に依存する仮説なら、それを裏付けると期待する事業上の証拠を示します。負債削減に依存するなら、返済資金の源泉を説明します。期待外れの結果をすべて一時的として片付けるなら、モデルはもはや検証可能な枠組みとして機能していません。
評価は売買タイミングを示す道具ではありません。市場価格は見積もりから何年も離れたままの場合があり、見積もり自体が誤っているかもしれません。取引費用、税金、為替変動も実現成果に影響します。このレッスンは分析道具を使って不確実性を説明するもので、証券を割安と認定したり、個々の投資家に適した価格を定めたりするものではありません。
事業価値から一株の持分へ橋を架ける
仮の事業価値3億ドルから負債1億ドルを引き、余剰現金2,000万ドルを足すと、簡略化した株主価値は2億2,000万ドルです。1,000万株なら一株22ドルになります。既に事業価値へ含めた現金を再加算せず、運転に必要な現金をすべて余剰扱いしないことが大切です。優先請求権や非支配持分なども確認し、利益指標と価値の対象範囲を対応させます。
株価が要求する利益を逆算する
仮の株価60ドルを将来PER20倍で説明するには、その評価時点でEPS3ドルが必要です。現在2ドルなら、追加の1ドルは販売増、利益率改善、株数減のどこから来るのでしょうか。PER15倍なら必要EPSは4ドルに上がります。倍率低下を予測しているのではなく、結論の前提依存度を示す計算です。過去最高の利益率を仮定するなら、価格、費用、製品構成について検証可能な説明が必要です。